根っこの治療後に痛いのはなぜ?受診は再び必要?
2020.10.28
みなさんは根管治療(歯の根っこの治療)を受けたことがありますか?根管治療は細菌に感染してしまった歯の根っこの中を消毒してきれいにしていく治療のことなのですが、 根管治療をおこなった歯にはもう神経はありません。しかし治療が終わり麻酔が切れたあと、痛みがあったという方もいらっしゃると思います。診療中に患者様から”神経はもうないのになぜ痛むの?”とよく聞かれます。今回はこの痛みの原因について解説していこうと思うのですが、まずは根管治療ではどのようなことを行っているのかを説明していきます。
根管治療中、歯医者さんは何をしているの?
歯の根っこの中は細い管のような構造をしていて、その中には歯髄(いわゆる歯の神経)が入っています。歯髄の中に入ってしまった細菌たちの数を減らしていくのが治療の目標です。治療では細い針金のような器具を使って感染した歯髄の組織をかきだしていきます。そして消毒薬によって細菌などを根っこの中から洗い流していきます。最後に治療と治療の間に根っこの中で細菌が繁殖しないように殺菌薬(水酸化カルシウム)を入れ、仮ぶたをして一回の治療は終了です。
根管治療後の痛み
根管治療が終わったあと、一時的に痛みを感じる場合があります。その原因としては2つほど考えられます。ひとつは器具で根っこの先を触ったことによる痛みです。細い器具で根っこの先のあたりを触っていくので、その刺激によって痛みが出ることがあります。イメージとしては根っこの外にすこし傷ができているような状態です。鈍く重い感じであったり、噛むと違和感があるといった症状が見られます。この痛みに関しては約1週間ほどで徐々におさまってきて、治療上の痛みなので大きな問題ではありません。もうひとつは殺菌薬を入れたことによる痛みです。根っこの中に殺菌薬を入れて細菌たちが死んでいくときに痛みが出る場合があります。この痛みに関しても1週間以内に引いてきます。
根管充填後の痛み
根管治療の消毒によって根っこの中の感染が取り除かれると、根っこの中に最終的なお薬を入れていきます。この処置のことを根管充填(こんかんじゅうてん)といいます。お薬を詰めていくとき隙間ができないように適度な圧をかけていきます。この圧をかけたことによる影響で”噛むと痛む”、”違和感がある”といった症状が出る場合があります。しかしこの症状に関しては一時的なもので通常1週間ほどで消失していきます。
再び受診する目安は?
根管治療後と根管充填後の痛みに関して説明していきましたが、どれも治療上の痛みであり大きな異常というわけではありません。どちらもだいたい1週間ほどで引いてきます。しかし1週間以上痛みが続く場合や1週間以内でもズキズキと激しく痛む場合は、何らかの異常がある可能性があるため受診していただいたほうが良いです。
また細菌感染に対して十分な対策を行っていない場合、感染が持続して痛みが引かないという場合があります。根管治療における感染対策の基本としてラバーダムというものがあります。
ラバーダムの重要性
皆さんはラバーダムを歯医者さんで使われたことはありますか?”使われたことがない”、”初めて聞いた”という方がほとんどだと思います。日本歯内療法学会の調査によると、日本では根管治療中にラバーダムを必ず使用するという歯医者さんはわずか約5%という報告があります。これは根管治療を専門としていない先生のデータであり、根管治療の専門医でも必ず使用するのは約25%となっています。一方、世界に目を向けると根管治療中にラバーダムを使用するのがスタンダードであり、歯科医療先進国のアメリカではラバーダムの使用率は90%を超えています。
ラバーダムはゴム製のシートから治療する歯だけを露出させ、他の部分は覆う器具のことです。ラバーダムを使用する最大のメリットは細菌感染の予防です。唾液の中には1滴(1mL)あたり1億〜10億もの細菌が存在しています。根管治療の治療目標は細菌の数を減らすことですが、唾液が入ってきてしまうなかで治療をしていると、良くしているのか悪くしているのかわかりません。
また根管治療で用いる消毒薬は、粘膜を焼いてしまうほど強力で危険な物を使います。ラバーダムを使用していることで、その消毒薬がお口の中に流れていかないため化学的なやけどから粘膜を守ることができます。ほかにも唇や頬、舌の粘膜に歯を削る器具が当たってしまうことによる損傷を防ぐことができます。このようにラバーダムは唾液による感染だけでなく患者様を守ることができるのです。
当院では保険診療であっても、特殊な場合を除きすべての患者様にラバーダムを使用させていただきます。ラバーダムを使用することで唾液が根っこの中に入ってこない状態を作り出し、治りやすい環境の中で治療を進めていきます。
根管治療中に中断をしてしまうと…
1回の根管治療後に「痛みがなくなったから」「忙しくて時間がないから」といった理由で根管治療を途中で中断したり、治療の間隔をあけてしまう患者様がいらっしゃいます。治療と治療の間には仮ぶたをしますが、時間が経つと隙間ができて細菌たちが根っこの中に入ってきてしまいます。その期間は約4週間と言われています。根管治療でせっかく感染を除去したのに治療を中断したり、間隔があいてしまうと再感染をしてしまいます。根管治療は回数がかかり患者様にご負担をおかけしますが、根気強く通っていただくことが重要です。
福岡市南区の歯医者 パセオ野間大池歯科
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パセオ野間大池